2020年6月に改正食品衛生法が施行され、飲食店ではHACCP(ハサップ)の実施が義務化されること
になります(ただし、経過措置期間として施行から1年間あります)。
その他、パン製造・そうざい製造・食品を分割して容器包装に入れて販売する業者、食品を製造・加
工する施設に隣接した店舗で小売販売する事業者も対象になります。
つまり、飲食店の営業許可とともにお弁当などのそうざいの製造販売の営業許可、持ち帰りサービス、
イートインスペースを設けている食品製造事業者も含まれるということです。
まず、「HACCPとは何か」からご説明していきます。

HACCPとは

HACCPは、Hazard Analysis and Critical Control Point(危害分析に基づく重要管理点)の略で、主に
食品工場の製造工程などで衛生管理の手法として導入されてきたものです。
飲食店のHACCP実施とは、飲食店の衛生手法をHACCPの考え方に基づいた手法で行うことです。
この義務化の背景には、

「食中毒事故の発生割合は59%が飲食店で発生していること(2017年統計)」をはじめ、

「健康被害情報の収集により、特別な注意を必要とする食品情報の周知」

「安全性が評価されている器具・容器の衛生整備」などによって、

食の環境変化や国際化等に対応した食品の安全を確保することがあります。
昨今の食品異物混入事故を受けて、
「店内が清潔でない」
「従業員の身だしなみが不衛生で気になる」
「汚れた厨房が垣間見えて気になる」
「虫がはっていた」などといった状況は、
お店を選ぶお客様にとって、ますます重大なチェックポイントとなっていくことが考えられます。
「義務だから」という視点にとどまらず、衛生管理が今後の店舗経営の安定・売上向上につながって
いると考えられます。
飲食店事業主の方は、自分自身を守るためにもHACCPを理解して実施することが大切になります。

HACCPの衛生管理とは

飲食店のHACCPに沿った衛生管理は大きく3つの流れになります。

・衛生管理計画の作成
 「一般衛生管理(施設・設備、食品取扱者、調理器具等の衛生管理)」と
 「重要管理ポイントの管理(調理加工工程の衛生管理)」に分けて、計画を作成します。

・衛生管理計画の実行
 ※計画はすべての従業員が確認できること、定期的な教育が大事です。

・衛生管理計画の実行の記録と確認

以下で、具体的な内容を説明していきます。

一般衛生管理(主に施設・設備、食品取扱者、調理器具等の衛生管理)

・原材料の受入確認
 外装汚損、異臭はないか
 納入温度は適切か
 使用期限・保存方法は問題ないか

・冷蔵、冷凍庫の温度確認 
 故障なく正常に温度が保たれているか

・調理機器点検、清掃・殺菌確認 
 異常音はないか
 油漏れはないか
 清掃・殺菌を行ったか

・調理器具の洗浄確認
 シンク・調理器具の洗浄・消毒はされているか

・施設の点検 
 床や内壁、作業台、流しは清潔か
 窓、出入口は開放されていないか
 ネズミやゴキブリなど病原菌媒介や異物混入につながる有害生物は発生していないか
 廃棄物置場の清掃を行ったか
 排水の処理状況は正常か

・トイレの清掃確認
 清掃を行っているか

・従業員の入室確認及び健康確認 
 体調、服装、髪、切り傷の処置はどうか

・手洗い
 調理前、トイレ後の手洗いはされているか?

重要管理ポイントの管理(主に調理加工工程の衛生管理)

重要管理ポイントとは、調理工程など、一般衛生管理以外の範囲でさらに徹底管理すべきポイント
をいいます。
重要管理ポイントとなるかは業態やメニューによって異なってきますが、
・「非加熱のまま食べる食品」(例  生野菜サラダ、薬味ネギ)
・「加熱してすぐ食べる食品」(例  ステーキ、焼き鳥、天ぷら)
・「加熱と冷却を繰り返す食品」
  (例  スープ、ソースなど加熱後冷まして提供又は再加熱して提供する食品)
といった調理方法で分類するのが、一般的なようです。
その分類ごとに調理工程を材料の受入から提供までのすべての工程を洗い出し、工程ごとで考えら
れる危害(微生物の残存・異物混入など)の検討とチェック方法(温度と時間など)を決めます。

(例)
・非加熱のまま食べる食品 
 提供までの冷却温度・時間は基準を満たしているか
 交差汚染防止(例 生肉などとの接触防止)

・加熱してすぐ食べる食品 
 加熱温度・時間は十分か

・加熱と冷却を繰り返す食品 
 加熱温度・時間は十分か
 冷却温度・時間は基準を満たしているか(特に急冷しないと微生物が増殖してしまう食材)

・その他飲食店が守るべき調理基準 
 食品衛生法に基づいて定められている調理基準は必ず守るように管理ポイントにします。
 例)
 鶏の卵を使用して調理する場合、70℃で 1 分間以上の加熱が必要。
 ただし、賞味期限を経過していない生食用の正常卵を速やかに調理する場合などは除く。

 魚介類を生食用に調理する場合は、真水(水道水など飲用に適する水)で十分に洗浄して、製品を
 汚染するおそれのあるものを除去する。

 牛の肝臓または豚肉・豚内臓は、生食用として提供してはならない。
 調理する場合は、中心部の温度を 75℃で 1  分間以上加熱する。

これら「一般衛生管理」と「重要管理ポイントの管理の計画」を記したものを「衛生管理計画」とい
います。飲食店のHACCP実施が義務化になれば、「衛生管理計画」の作成が必須となります。

「衛生管理計画」の作成・実施にあたって注意すること

失敗したらどうするかも決めておく
 食品を決まった温度・時間の基準通りに調理できなかった時など計画から外れた場合の対応をあら
     かじめ決めておくことが必要です。
 「加熱してすぐ食べる食品の場合は、再度加熱するのか、廃棄するのか」
 「加熱後急冷が必要な食品の冷却に基準より時間がかかってしまったときは廃棄するのか」等あら
 かじめ決めておきましょう。

管理は「衛生管理記録」に残す
 日々管理していることを記録に残すことが重要です。管理していることを記録に残すことで、従業
 員全員がもれなく適切に衛生管理を実施しているかどうかチェックすることができます。
 さらに、万が一食中毒発生原因の疑いを掛けられた際に、日ごろ自分たちが適切に衛生管理を行っ
 ていることの証明にできます。
 記録はボールペン等消すことができない筆記具で記入者・日付・時間を書いていきます。
 衛生管理記録は決められた書式は特にありません。
 「第三者に証明する」する観点から、自分たちが記入しやすく、記録としても見やすい書式を使う
 ことが好ましいです。すでにお使いのものがあれば、要件を満たさないところだけ修正するだけで
 問題ありません。

「衛生管理計画」の検証と是正

「衛生管理計画」が問題なく実施されて、管理も整っているかどうかを定期的に検証していくことが
大事になります。従業員の入替や機械・機器の検証やバラツキ・メニューの増減など計画を立てた当
時と変わることがあるからです。
もし、管理基準が満たされない時や問題点がでてきた時は、計画を修正して、あるべき形にします。
この対応を「是正措置」と言っています。
もちろん、是正措置の経過と対応の記録も残しておきます。

記録の保管

日々の衛生管理の結果を計画に沿って記録に残します。
問題があった場合はその事実・内容を記録します。
できれば、責任者が確認できるしくみにして、改善に活かすようにしておくと良いでしょう。
また、一定期間の保管期間と廃棄期限を設けるようにします。
保健所の食品衛生監視員の方から記録の提出を求められた時に速やかに対応できるように保管場所
やファイリング方法も決めておくとより良い管理ができます。